NISHISAITAMA PROJECT

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南薩鉄道廃線跡を伝う薩摩半島西側サイクリング前編

前回からの続きです。

枕崎駅前に宿泊した翌日、天気の方は相変わらずの曇り空とはいえ、雨は降りそうになかったので、予定通りに、枕崎から薩摩半島の西側を北上してみることにしました。

枕崎から薩摩半島の西側を行くとなると、坊ノ岬沖海戦の舞台の一つである坊ノ岬(実際には徳之島の方が近いらしい)や、薩摩半島最西端の薩摩野間岬などを経由し、加世田の市街地を抜け、日本三大砂丘の一つである吹上浜の横を走りきるルートがまず思い浮かびます。

今挙げたルートを行けば間違いなく薩摩半島完全制覇となりうるところではありますが、よくよく調べてみると、枕崎から坊ノ岬方面に向かうと枕崎→加世田だけで70kmとなり、しかも道中はいわゆる酷道の一つに挙げられる国道226号線。



経験上、リアス式海岸の海沿い酷道険道はアップダウンが激しいことが容易に想像できるし(小豆島や佐田岬半島で思い知らされた)、それに我がdoveplusで悪路を70kmも走ったら、それだけで一日が終わってしまいかねないので、魅力的なこのルートは諦め、枕崎からまっすぐ国道270号線経由で加世田へ向かうことにしました。 

とはいえ、この加世田直進ルートは、これはこれで見所がないわけではないのです。



このルートは、かつて薩摩半島の西側を走っていた南薩鉄道のルートそのもので、廃線巡り的にはむしろこっちの方が好都合なのですね。

さらに調べてみると、山越え直進ルートの割に峠越えも厳しく無さそうだし、忠実に南薩鉄道に沿っていけば、枕崎駅からゴールとなる伊集院駅まで50km弱と、doveplus的にはちょうど良い距離(一般的なdoveplusユーザーから見れば長距離ですけど)なので、今回は南薩鉄道を主軸に走ることにします。



テンションが上がらない曇り空のうえ、天気予報では強い西風に警戒しろとのことで、厳しい行程が予想できます。

昨晩、がぶ飲みした焼酎で酔っ払いつつビジホの部屋にて南薩鉄道の線路の痕跡をGoogleMapsで調べた限りでは、枕崎の市街地にはほとんど残っていないことが分かっていたので、廃線跡はさておき、加世田方面への最短ルートである国道225号線を使って向かうこととします。



花渡川(Kedogawa-river)に沿って峠越え開始!

前日に降った雨で路面が濡れていて爽やかさの欠片もなく、さらには延々と続く微妙に勾配のある登り坂も重なり、ただただ黙々と国道を進んでいきます。ちなみに国道自体はそれほど交通量は多くなく、コンディションさえ良ければ悪くない道ですね。



南さつま市(旧・加世田市)の境目まで来ました・・・・が、峠自体はもう少し先なので、まだまだ登りが続きます。

そしてこの時点ですっかり存在を忘れていた南薩鉄道の遺構が、南さつま市に入ってすぐに現れます。



薩摩久木野駅の跡地で、現在は少し広めの広場が残っている程度となってるのですが、この駅の前後には築堤や鉄橋跡も残っていて、やっと廃線跡巡りっぽい感じになってきました。



駅跡の広場から延びる2本の轍が廃線跡で間違いなさそうです。



「築堤」は知らない人が見たら、ただの堤防にしか見えないでしょう。よく見ると堤防というか築堤の切れ端部分にコンクリートの台座が残っていて、かつてここに花渡川を渡る鉄橋があったということが分かる人が見れば分かります。

枕崎から付き合ってきた花渡川が左へ逸れて、最後の登り坂を超えると峠を越え、やっと加世田市街地へ向けての下り道が始まります。



そこに現れたのが津貫駅。

駅跡は保育園になっていて特に駅らしき痕跡はありません。



それよりも道路をはさんで反対側にある津貫蒸留所が気になります。
なんでも、日本最南端のウイスキー蒸留所だそうで、営業時間内なら見学もできるとのことでした(と、後で調べて知ったという・・・見学できるとは思わなかったのでそのままスルーしてしまった)。

津貫駅をすぎたあたりから天候も徐々に回復し、やっと調子が乗って来たというところで、加世田の市街地へと入っていき、最初の目標地点の加世田バスターミナルに、ぴったり予定通りの時刻に到着。ここは、南薩鉄道の中心駅だった加世田駅の跡地でもあります。



駅敷地がそのままバスターミナルになっていて、現在も加世田の公共交通機関の要所。かつては大きな駅がここにあったことがわかるくらいには広々しています。

加世田駅から先は交通量の多い国道ではなく、もう少し走りやすそうな海沿いを走ってみようと考え、西側に進路を取り海に向かって走り出そうとしたところ、思わぬところでサイクリングロードを発見。



突然の「りんりんロードSTART」。


こういう市街地にある不自然なサイクリングロードは、鉄道の廃線後であることが多く、ここももちろん廃線跡。南薩鉄道万世線の廃線跡ですね。まさか、廃線跡がそのままサイクリングロードになっているとは知らず、良い意味で想定外でした(基本的にあんまり下調べしないで、ぶっつけ本番で現地に行く派なので)。



ただひたすらまっすぐ延びる廃線跡



現役当時は宮原隧道というトンネルがあった箇所は、切通になっています。小さい峠越えとはいえ、蒸気機関車時代の古い鉄道の廃線跡は基本的に勾配も緩やかなのが走りやすくて良いです。

加世田バスターミナルから2.5km、あっという間に終点の薩摩万世駅に到着です。1区間だけの短い支線だったにもかかわらず、戦前は利用客も多かったとのことですが、正直なところ、そんな繁栄など全く想像できないぐらいには静かなところです。



駅前と思われる空き地の隣には今でも営業中の旅館が2軒あり、駅跡に掲げられていた案内の寄れば、当時は駅前旅館として万世線の利用客がよく利用していたとか。始発の4時台の列車に乗って鹿児島駅まで行き、そこで鹿児島本線(現在の肥薩線?)に乗り継いで門司行き急行に乗って九州各地や本州方面へと向かったそうです。

サイクリングロードはここで途切れてしまったので、この先は適当に近くの道路へと乗り移り、海の方へと向かって行きます。



万之瀬川(Manosegawa-river)の河口まで来ると、そこには大きな斜張橋が!

これは、サンセットブリッジという橋で、この大きさなのに歩行者および自転車専用の橋というから、なかなか贅沢な橋です。自転車専用なら渡るしかないだろう!と、橋を見たら渡りたくなるいつもの勢いで喜び勇んで橋のたもとまで行ってみると・・・・



なんと強風のため通行止め! これは残念!

実際にこの日は風速10メートルを超える強風が吹き荒れていて、陸地ですら風に煽られながら自転車をこいていたぐらいなのに、風を一切防ぐことのできない河口付近の橋の上など、それはもう危険であることは間違いありません。なので、素直に引き返すことに。

そしてこの強風に後々悩まされる訳なのですが・・・長くなってきたので続きは次回へ。

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