NISHISAITAMA PROJECT

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南薩鉄道廃線跡を伝う薩摩半島西側サイクリング後編

前回からの続きです。

吹上浜サンセットブリッジが通行止めだったゆえに、来た道を少し戻って万之瀬川を一般道で渡って対岸へ行き、交通量が少なそうな国道よりも海寄りの一般道を日置方面へ北上して行きます。

すると、新たな自転車道の入口を発見。



加世田日吉自転車道

地図で確認する限りでは鉄道の廃線跡ではなく純粋な自転車道のようです。自転車専用道ならば、安全・快適に走行できることが約束されているので、さっそくこちらを走ってみることにしました。

軽トラぐらいなら走ってきそうな畑の中を行く自転車道をしばらく進むと、「サイクリングロード」の文字が。



入口には車止めもあり、ここから正真正銘、正式なサイクリングロードが始まるようです。

この加世田日吉自転車道は、吹上浜という日本最大級の砂丘に沿って広がっている防風林・防砂林のような森の中をひたすら進むサイクリングロードで、海沿いを走る割には海はほとんど見えません。



でも、誰もいない無人地帯の防風林の中をひたすらまっすぐ突き進むことができ、これがなかなか楽しいですね。どことなく北海道あたりの最果てを行く鉄道廃線跡っぽい雰囲気もあり、これはこれで廃線跡巡りをやっているような気分になります。

また、この日は東シナ海側から吹き付ける強い西風がキツかったにもかかわらず、この森の中はほぼ無風状態で、そういう意味でも快適でした。まあ、写真を見ても分かるとおり、前日の嵐の影響で路面は水浸しで落ち葉も散乱している有様だったため、気分良くサイクリング・・・とまでは行きませんでしたが、贅沢は言いません笑

サイクリングロードスタート地点から約7kmほど、南さつま市日置市の市境を越えて少し進んだところで、入来浜という浜辺が見えてきます。枕崎はもとい、鹿児島市内を発ってから薩摩半島の海沿いを移動しているのに、今の今まで砂浜に降り立ったことが一度も無かったし、それに吹上浜のそれ自体もまだ見ていなかったこともあり、日本三大砂丘の一つである海岸線を眺めてみることにしました。



砂丘というと、個人的には鳥取砂丘を思い浮かべてしまいがちですが、ここの砂丘鳥取砂丘のように面状に広がる砂丘ではなく、細長い砂浜が何十キロにも渡って延びるような砂浜です(もしかしたら以前は幅もあったのかもしれないし、鳥取砂丘のようなところもあるかもしれない)。しかしながら、どこまでも続く砂浜はなかなかこれはこれで壮観な眺めなので、一度ぐらいは海岸線に出て、砂丘を眺めてみると良いでしょう。

それと、やはり海岸線まで出るとものすごい強風で立っているのもやっとといったところ。doveplusも見えないところで固定してなんとか立たせている状態で、この風を完全に防御できる防風林のありがたさが身をもって実感できました。

・・・

入来浜でサイクリングロードは、普通の一般車道に組み込まれて車道に対する歩道みたいな形でしばらく平行した形になり、吹上浜公園までそのスタイルで進んでいきます。

そして、吹上浜公園から再び自転車道として車道から分離独立するわけですが、ここに来て加世田バスターミナル以来、10kmほど別行動していた南薩鉄道の廃線跡が今度は自転車道として舞い戻ってきます。

 

吹上浜駅の跡地。

入来浜付近から吹上浜駅跡までのサイクリングロードは、路面電車レベルの直角カーブや、昔の蒸気機関車では登ることが不可能なぐらいの急な坂(しかも自転車道はループしながら登る)があるくらいなので、途中までは純粋な自転車道だったと思うのですが、吹上浜公園の途中のどこかで廃線跡と合流したようです。



この畑の区画を無視した緩いカーブと絶妙な高さの築堤。線路が敷かれている風景が容易に想像できます。

吹上浜駅以北の自転車道もとい、南薩鉄道の廃線跡は今までに無く様々な遺構が残されていたり、場所によってはホーム跡なども残されていました。



こちらは小野川に架かっていた鉄橋の跡。鉄橋の前後は自転車道として整備していて、橋の部分だけは近くの道路に迂回するようになっています。



永吉駅はホームが残されていました・・・が、もしかしたらこのホームは後付けで、その奥に見えるちょっとした段差の方が本来のホームかもしれません(後述)。今となっては確かめようがないモニュメントですけど、いずれにしても、かつての駅であることには違いないので良しとしましょう。

永吉駅を出ると、南薩鉄道は永吉川を渡っていて、現在もその痕跡を確認することができます。



鉄橋部分は既に取り除かれていますが、橋桁部分だけは今でも健在です。鉄橋部分があると川が増水したときに氾濫の原因になったり、アレな人が鉄橋を歩いて渡って転落する可能性もあるし、いろいろな理由で鉄橋部分だけ取り払われてしまったのでしょうね。とはいえ、ある意味この4つ並ぶ橋桁は南薩鉄道最大の遺構の一つでもあるので、廃線巡りを主目的としている人ならばここは訪問しておいて損はないかと思います。

お次は吉利駅。



ここもこんな感じでホームが残って・・・と、よく見たらその先にはもうひとつのホームが。



おそらくこっちが本来のホームでしょう。一つ前の永吉駅と同様、本来の駅の付近に新たにホーム(のようなもの)が後付けで造られているようです。最盛期には交換可能駅だったらしいし、その情報とも合致しますね。

吉利駅から先は国道270号線と並行してしばらく進み、自転車道の方は途中で海岸線の方へと進んでいきますが、いきなり鉄道らしからぬカーブが連続するようになったので航空写真で確認すると、案の定、南薩鉄道の廃線跡は反対の方向へと進んで行ってました。

気がついたら廃線跡と合流し、気がついたら廃線跡がいなくなっている加世田日吉自転車道廃線跡を忠実にトレースする予定の人は事前に入念な下調べをした上で、訪問することを強くオススメします!

廃線跡ではなく単なる自転車道となった道を走ると、今度は海岸線を行くようになり、小さい川を渡った砂浜の先でゴールとなります。



スタート地点から約16kmほど。楽しく快適なサイクリングロードでした。

・・・

それでは、この先はどうしようかと地図を眺めながら計画を立ててみます。

1.少し手前でロストした南薩鉄道の廃線跡を追いかけて伊集院駅へ向かう
2.まっすぐ海岸線を北上し湯之元駅へ行く

ここで改めてGoogleマップで地形図を確認すると、南薩鉄道はここから先、伊集院方面へ向けて薩摩半島の内陸部を進み、それなりな峠を越えてまっすぐ突き進んでいくようです。高低差はあるし、自転車道としては整備されていないようだし、ここまで40km近く走り続けてきた身には厳しそうな予感がします。

一方で、まっすぐ海岸線を北上して湯之元駅まで行けばGoogleマップ上では」高低差はほぼなく、しかも締めくくりに湯之元温泉に入ることも可能なので、ここで南薩鉄道の廃線跡とはお別れし、温泉を目指すことにしました。あれこれ理由を並べてますが、ようするに温泉に入りたいのです笑

しかし、この判断が今思えば間違いだったのです。

 

・・・

サイクリングロードが終わった後は国道270号線を走ることになるのですが、この道路がそこそこ交通量があり、しかもGoogleマップでは表示されていなかった微妙な起伏が意外と多いのですね。鉄道の場合は勾配がある場合は迂回するなどして勾配を緩和したり、切通やトンネル、鉄橋で回避できるのですが、粘着力のあるゴムタイヤで走る自動車の場合は急勾配などお構いなしにまっすぐ道路を敷いていくので、これがギア無しdoveplusには厳しいのです。

さらには今まであった防風林のような風よけになる森もないので風は強いし、強い向かい風の中の急な登りなどは、もう厳しいとかそういうレベルじゃないぐらいのキツさでした。

そんなアップダウンが連続する区間が終わると、次にやってきたのが海岸線ギリギリを走る区間



平坦な道になったと喜んだのもつかの間、今度は荒れ狂う西風というか北西の風が襲いかかります。つまり横から海水を含んだ強風に煽られる上に、さらに向かい風も吹き荒れるような形になっていて、これのおかげで全然自転車が前に進まないのです。自転車に乗っているのに歩いている速度しか出せないみたいな、牛歩戦術な感じでしか進めません。

ここに来て


「やはり温泉などに惑わされず、素直に内陸部を進んだ方が風の影響も受けずに良かったのでは・・・」
「これは中途半端に廃線跡巡りをやめてしまった事による南薩鉄道の呪いでは??」


と思いつつも、今更戻るのも無理な話なので、とにかく前へと進んでいきます。

江口浜公園の横を流れる江口川に沿って遡上し、東市来駅付近から鹿児島本線の横の道を走り抜けて小さい峠を越えると、なんとか湯之元温泉の温泉街が見えてきます。

結局ここで山越えすることになるなら、初めから伊集院駅に向かって、そこからJRや路線バスで輪行するなり線路沿いを走るなりして湯之元駅へ向かった方がはるかに楽だったと言わざる得ませんが今更ですね。まあ、そんなことより、やっと温泉にたどり着けたのです。

湯之元温泉は調べてみれば、日帰り入浴できる温泉もいくつもあり、訪問してみたのがこちらの「ゆわく温泉」。



建物の入口が大変分かりづらく、目の前の道路を一往復半もしてしまったという温泉。今の時代ならGoogleマップなり何なりとネットで調べられるけれど、それ以前だったら到達どころか存在すら知ることができなかったような気がします。

さて、ここの温泉は建物自体は昭和中期ぐらいに建てられたコンクリ造でも、中の温泉は昭和初期からある歴史のある温泉であり、建物の見た目とは裏腹に、既に絶滅危惧種になっているような昭和の温泉といった感じでした。

そしてこの温泉は、「ぬる湯」「あつ湯」の2つの浴槽があると説明されたのですが、これがちょっと違っていて、実際には「あつ湯」「超あつ湯」という具合で、「ぬる湯」の方ですら43℃前後、「あつ湯」に至っては48℃ぐらいあるとのこと。実際に「ぬる湯」の方でも、体感的には東京都心の江戸っ子ご用達の銭湯以上の熱さで、一度入ると身体が動かせなくなるレベルであり、「あつ湯」については、もう笑ってしまうしかないぐらいの温度設定。でも「ぬる湯」については、慣れるとこの温度が心地よく感じられるようになり、これが枕崎からはるばる自転車を漕いでやってきて疲れ切った身体に良く効き、かなりリフレッシュできました!

源泉掛け流しの温泉で脱衣所から浴場にかけて硫黄泉の香りが充満していて、それだけでも温泉地にある古き良き温泉という雰囲気を十二分に堪能できたし、入浴料は120円という破格値なので、さっと訪問して10分ぐらいで入ってすぐ出たとしても、満足できる金額設定かと思います。最近流行のスーパー銭湯的な温泉ではなく、久々に「ザ・温泉」といった感じの温泉に巡り会えて大満足でしたね(ちなみにコインロッカーがないので、徒歩や自転車で訪問した時は、貴重品の取り扱いに注意した方が良いです)。

ゆわく温泉でひとっ風呂浴びた後は、鹿児島本線湯之元駅までdoveplusで1kmほど移動し、今回の自転車旅もこれにて終了。



プレハブのような湯之元駅から鹿児島本線に乗って、仕事道具を預けておいた鹿児島中央駅へと向かいます。伊集院駅から先は、南薩鉄道が乗り入れて走っていた区間でもあるので、ある意味、南薩鉄道の生き残り区間とも言えなくもないですね。



鹿児島中央駅のロッカーで荷物を回収し、駅構内でビールと肴を調達してから、今度は「特急きりしま」で日豊本線を突き進みます。



鹿児島の締めくくりに、夕暮れの桜島を眺めながら温泉後のビール!

という具合に、今年の年始は鹿児島市内でテレワークしつつ市内観光して、その後は薩摩半島を鉄道やバスで輪行しつつ、残りはdoveplusで一周して、締めくくりに温泉に入って最高のビールを飲みながら終えるという、幸先の良いスタートダッシュを切ることができました。

この後、ちょろっと寄り道したお話もあるので、それについては次回のお話で。

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