半年ほど前にリベンジ三江線をやってから数ヶ月後、残念な事に三江線の廃止が決まってしまいました。もう近い将来三江線に乗る事ができなくなってしまうために、最後に一発、前々からやってみたかった三江線の有名な駅である宇都井駅で途中下車して、宇都井駅周辺を歩き回ってみましょう。
ただ、宇都井駅に到着する三江線は1日に4本しかなく、広島駅からだと早くても11時過ぎに到着し、そのあと戻りの三江線は17時頃まで来ないという有様、つまり宇都井駅で6時間ほど待機する必要があるのですが、6時間も待機するなら6時間かけて歩いた方が楽しそうだったので、宇都井駅から三江線沿いの田舎道を、ひたすら歩いてみました。
まずは広島から芸備線に乗って三次まで行き、三江線に乗り換えます。
18切符のシーズンであるのに加え、三江線が廃止になるニュースが連日に渡って伝えられているためか、「乗る事が目的の乗客」がたくさん集結していました。個人的には静かに鉄道の旅を楽しみたいと思っている性分ゆえに、こういう鉄道マニアに囲まれながら乗車するのはあまり好きではないとはいえ、状況が状況なので贅沢言っては居られません。早速乗り込みましょう。
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比較的混雑していたものの、いつもの定位置になりつつある最後部のポジションを陣取り、最後になるであろう三江線からの車窓を目に焼き付けつつ、江津方面に向かいます。
俺が山陰方面に行くと天気に恵まれる事が多いですね。大雪だった事もありますけども。
この景色が失われるのは悲しいです。これも時代の流れなのか・・・
三次より一時間強ほど乗り通すと、宇都井駅に到着します。普段の宇都井駅は年間の利用客が平均0名というとんでもなく利用客の少ない駅というか、利用客皆無の駅なのです。ところが有名駅である上に廃止が迫っているという事もあって、こんな駅ですら4名ほどの下車客がいました。そのうちの1人は俺です。
これだけ見ると普通の田舎の駅って感じですね。ところがこの駅、何がすごいかというとその立地条件なのです。
地表から駅まで100段以上の階段を駆け上がる必要があります(動画は上から下ってます)。しかもエレベータやエスカレータなんてものはあるわけないので、老若男女問わずみんな平等にこの大変な階段を上らなくてはならないメチャクチャな駅なのです。
この不思議な光景が拝めるのもあとわずか。
気を取り直して歩きましょう!
事前のリサーチでは、15時過ぎに2つ隣の口羽駅始発の三江線があることはチェック済みなので、最悪そこまで6時間かけて歩けばいいわけです。でも、せっかくなのでもっと先まで歩いてみたいですね。なので今回は20km先の香淀駅を目標として三江線沿線を歩いてみました。
宇都井駅を出て少し歩くと早速三江線の立派な橋梁が目にとまります。
高千穂鉄道を彷彿とさせる立派な橋梁。口羽〜浜原間、いや、三次〜浜原ぐらいまではトロッコ観光鉄道として第2の人生を歩ませても良いのではないでしょうか・・・?
ひたすら歩きます。ここまでは天気が良かったのに、伊賀和志駅の待合室を見学していたら突然の通り雨!
たまたま待合室にいるときに豪雨に見舞われたのは不幸中の幸い。いや、不幸でも何でも無くとても幸運だったと思います。15分ほどの通り雨のおかげで空気が綺麗になり、よりいっそう見事な風景に出会える事ができました。
豪雨の跡の伊賀和志駅を出た直後の伊賀和志周辺の様子。なんと、右端に虹が出ています! ってわかりにくいですね!
まだまだ余裕で元気なので、さらに歩きましょう。伊賀和志から30分ほど歩くと口羽駅近くに到達します・・・が、口羽駅は国道から遠いので、駅には近づきません。
江の川が湖のようです。
国道375号線は交通量も(この辺にしては)多いということもあり、対岸にある三江線沿いの狭い生活道路を歩くことにしました。
線路に入りたい放題。入りませんけども。
口羽~江平の間の道路は「車両通行止め」と書かれていたのですが「車両」が通行止めなら徒歩は大丈夫だろうと勝手に決めつけて行ってみたところ、全く問題無く通行できたので、こちらを選んで大正解。三江線の線路をじっくりと眺めながら江平駅まで歩くことができました。
というか、ここで戻れと言われてもおそらく強行突破していたと思いますけど・・・
江平駅ではまだ乗車せず先に進みましょう。
宇都井駅を出て約3時間、いい加減何か食べたいと思いつつも、お食事処はおろか、コンビニや雑貨屋すらなかったので絶望していた俺の目の前に道の駅らしき施設が! やっとこさ、ここで初めて川の駅常清といういう食堂併設の道の駅に出会うことができたのでお立ち寄りしてみました。
とんこつしょうゆラーメンがセットのラーメン定食が中国山地で出るとは意外といえば意外。なかなか美味しかったので問題なし!
ここで時間を確認すると、狙っている三江線が最寄り駅の江平駅or作木口駅に来るのがだいたい1時間半後、1時間半あればその次の香淀駅まで歩くこともできそうだなと思いつつも、ただ歩くのも芸がないので、この「川の駅」の名前にもなっている常清滝に行ってみることにしました。
調べてみると常清滝までは片道1.8kmほど、往復した上で駅まで行っても5kmぐらい。1時間半あればちょうど良さそうなので、これはもう行くしかありません(歩きすぎてて距離感覚が麻痺してます)。
川の駅から10分ほど歩くと、かつての作木村の村役場が見えてきます。その役場の横の山道を5分ほど進めば常清滝に到達します。
数段に分かれている滝をすべてあわせると落差は100メートルを超えるほどの大きな滝で、川の水量のわりには迫力のある見事な滝でした。正直、江の川の支流のそのまた支流の小さい沢筋にある滝だったので全然期待していなかったのですが、これはわざわざ見に行く価値はあるかと思います! 写真だと地味ですけどね!
滝に満足した御一行は来た道を引き返し、さっき昼食を頂いた川の駅まで戻ったところで時計を見ると15時すぎ、そして三江線の線路を見てみると・・・!
三江線だ! 実は動いている三江線を外から眺めるのは初めてだったので、大変貴重な体験ができました。特に三江線のような一日に4~5本程度しか走っていない路線だと、狙って行かなければそうそうお目にかかれるようなこともないので、これはラッキーでしたね。
いま行った三江線は口羽駅で折り返してくるので、それに乗るために江平駅へと行きましょう。これを逃したら2時間は待ちぼうけを食らいます。
これに乗って帰りましょう。
その後は三次まで移動して芸備線に乗り換え、広島へと帰ったのでした。
三江線は2018年春に廃止となるため、現時点ではまだ1年以上の猶予はありますが、三江線が走る江津~三次は広島や島根周辺の人以外では気軽に行くことができず、まして関東からではそう簡単に訪問できるような土地柄でもないので、たぶん自分がこれに乗るのは今回が最後になるかと思います。
個人的には3回乗車したし、これから乗り鉄の人(葬式鉄)たちが押し寄せて、静かなローカル線の旅を楽しむことも難しくなってしまうし、もう二度と乗る事はなさそうですが、もう一度ぐらいは乗車しておきたいですねぇ・・・